君に、この声を。
窓の外を見ていた部長が、ゆっくりと振り向いた。
その瞳には、目の前の人を怯ませる力があった。
やっぱり、この人は苦手だ。
「何を言われるか、検討もついてないの?」
底をつくような低いアルトの声。
この人とこの明るい場所は全然合わない。
「なんのこと?」
「とぼけないでくれる?」
部長はそういうけど、私は何もとぼけてない。
強いて言うならば、この前の土曜日の練習のとき、寝坊して10分ほど遅刻したことくらい。
でも、それなら冷たく睨んで終わり、っていうのが部長の接し方(?)。
こんな詰めよって話すことなんて、初めてだった。