君に、この声を。
1. 思い
智那side.
崎田先生お気に入りのマグカップから、うっすらと湯気がたっていた。
そこから香る、先生特製のミルクコーヒーの匂いが私の体を撫でていた。
「智那」
ゆらゆらとゆれるかすかに白い湯気から、崎田先生の声で、現実に引き戻された。
「もう1回、考え直してくれない?」
今までに見たことのないような、崎田先生の困った顔。
そうさせている原因が自分なのだと実感すると、少々胸が痛む。
でも。
「もう決めたんです。やめるって」
その意思はきっと、変わらない。