君に、この声を。



そういや、智那はいつも笑顔だった。



俺と教室で初めて会ったときも、眩しいくらいの笑顔と笑ってた。


音楽室の中で目があったときも、笑顔で笑いかけた。


歌を歌っているときも、絶対に口角を下げることはなかった。





唯一、智那が笑わなかったのは――――





俺が智那に暴言を吐いたときだけだ。




吹奏楽部の部長と話していたとき。


教室で怜に詰め寄られていたとき。




あれから、智那はあんまり笑っていない気がする。


音楽の授業で第一音楽室に来たときも若干顔が歪んでいたし、教室でも控えめの表情。





あの眩しい笑顔を奪ったのは、俺なのかもしれない。



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