君に、この声を。
2人の間に、微妙な空気が流れた。
初めて、佐々木さんと話した。
でも、もともと人見知りな方の俺は、自分から話しかけるようなことはできない。
「今日、3年少なくない? 女子あたしだけだし」
急に言葉を発されて、心臓が飛び上がりそうになった。
なんとか、自分の中をコントロールする。
「女子はもともと少ないから」
「ま、そーだよね。仲いい人も智那くらいしかいなかったし」
さっきまでとは違う、落ち着きのある声で佐々木さんは言った。
でも、ほんの少し、智那の名前を出したときは、その声のトーンが低くなっていた。
『智那』
その名前を聞くだけで、あの涙が蘇る。