君に、この声を。
「智那が素直になれないときはいっぱいあるの。合唱団辞めるって言い張ってるけど、本当は誰よりも合唱大好きなんだよ」
佐々木さんは、そう言うと俺の方を見てニッと笑った。
その健康的なピンク色をした唇の間から、真っ白な歯が覗いていた。
「だから、智那のこと、あんまり責めてあげないで? 大葉を頼ってきたら、力になってあげてほしい」
その言葉と同時に、ドアが開いて崎田先生が現れた。
一気に音楽室内の空気が変わり、それぞれが発声練習の位置についた。
俺と佐々木さんも例外ではなく、どちらともなく動き出した。