君に、この声を。
3. 合唱
智那side.
クラリネットを片手に、私は第二音楽室を出た。
吹奏楽部員は誰も来ていない。
だって、まだ練習が始まる1時間前だから。
珍しく早くに目が覚めて、特に家ですることもなかったから、練習開始時間よりも早く学校に来ることにした。
どこで吹こう?
どうせなら、1人で周りを気にせずに吹きたい。
音楽室でもいいけど、せっかくなんだから違うところで吹きたい。
そんなことをボーッと考えてとろとろ歩いていたら、階段の影から崎田先生が現れた。
こっちを見ることなく、きれいな姿勢で第一音楽室に入っていった。