君に、この声を。
「別に……何もしてないよ。どこで吹こうか考えてただけ」
何もしてないことはないけど、考えていたのは事実。
どこで吹こうか考えてたのは事実だけど、合唱のことも考えていたのも事実。
それを言ったら、部長は今の倍眉間にシワを寄せて、一段と鋭い目がつり上がるだろう。
そんなことになる前に、話題を変えなきゃ。
私は少し苦し紛れに笑顔を部長に向けた。
「部長、早いね。私、結構早く来たんだけど……」
「私はいつもこれくらいに来ます。城山さんにしては早いと思いますが」
最後の一言が余計だ。大きなお世話。