君に、この声を。




「合唱のこと考えてたんじゃないの?」




部長の方を見ると同時に、低い、深いアルトの声が私に突き刺さった。



無意識のうちに身震いがした。

鳥肌もたった。



身体全体が、その声で発される「合唱」という言葉に拒否反応を起こしていた。



「そうでしょう? 考え事なわけないでしょう?」

「なんでそう思うの?」



なんて答えたらいいのかわからなくて、頭に浮かんだことを口にした。


すぐに後悔した。

ここで、否定しておけばよかった。




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