君に、この声を。
1. 証(あかし)
「はい、そこ。もう1回ー」
パン、と手を叩く音がして、ピアノだけの音楽が止まる。
高い天井は、新しい家のように真っ白。
高い位置にある窓から、優しい日差しが差し込んでいる。
目の前には黒く艶やかに光るグランドピアノ。
少し固めのピアノいすに座った私は、腕をだらんと垂らした。
「ちょっと休憩しよーぜー、奏太ぁ」
いすに座る私と、そのとなりに立つ奏太の後ろから、気楽な怜の声が聞こえた。