君に、この声を。
「あ、起こしちゃった?」
聞き慣れた声が、俺の耳に滑り込む。
声がしたほうを見ると、智那がいた。
智那はピアノいすの上にのって、何かをしようとしているようだった。
「なにしてるんだ?」
俺が起き上がろうとすると、智那が慌てて首を横にふった。
「だめだめ。奏太はまだ寝ててよ」
「なんでだよ」
「奏太、眩しいでしょ。ブラインド閉めたいから、どこまで閉めたらいいかわからなくなっちゃうじゃん」
智那が窓に手をのばしたところで、さっきの言葉をやっと理解できた。
窓から入る直射日光が、寝ている俺の顔面に当たっていたらしく、智那はそれをブラインドで遮ろうとしていた。