君に、この声を。



何かを思い出しそう。

でも、何もわからない。


なんなんだ……?



「どうしたの?」



その声で、再び現実に引き戻される。


目の前には、眉毛をはちの字にした、心配そうな智那。



「すごい深刻そうな顔してるけど……」

「いや、なんでもない」



俺は慌てて否定し、まっすぐ天井を見た。



「ならいいけど」と、智那は案外簡単に話題から離れてくれた。



根拠なんか何もない。

でも、智那にはこの気持ちを言ったらいけない気がした。



< 200 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop