君に、この声を。
そのとき、玄関から物音がした。
それを確認したかのように、智那の少し固かった表情がやわらいだ。
「何の音?」
俺がそう言ったのと、部屋のドアが開いたのは、ほぼ同時だった。
「おかえりっ」
「ただいま……って、奏太ぁ!」
ドアから現われたのは、右手に袋を持った怜だった。
怜は俺と目を合わせるなり、走ってこっちに寄ってきた。
「俺、マジで心配したから! 奏太が死んだらどうしようかと思ったから! マジで怖かったから!」
あまりの勢いにビビった。
「ごめんな」と小さく謝ると、「ほんとだよっ!」と3倍の大きさのボリュームで返事がかえってきた。