君に、この声を。



「怜、奏太まだ目が覚めたばっかりなの。あれ は?」

「あっ、ごめん。あれならちゃんと買ってきた よ」



目が覚めたばかりということが、怜の遠慮のき っかけとなり、声のボリュームが半分になった。



それから怜は右手に持っていた袋をガサガサと し始めた。


その袋は、近所にある薬局のものだった。



ジャジャンッと効果音が出そうな勢いで、怜が何かを取り出した。



「冷えピタシート、怜に買ってきてもらったの」



智那が言うのと同時に、怜は冷えピタシートを中から取り出し、俺に渡した。



「熱あんのなら、無理すんな。風邪が俺らにうつると嫌だから、マスクぐらいしろ」



と、冷たく突き放す怜だけど、これは単なる照れ隠しだってことを俺と智那は気づいている。


俺と智那は必死に笑いを堪え、違う意味で震える手で怜から冷えピタシートを受け取った。


< 202 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop