君に、この声を。
「怜、奏太まだ目が覚めたばっかりなの。あれ は?」
「あっ、ごめん。あれならちゃんと買ってきた よ」
目が覚めたばかりということが、怜の遠慮のき っかけとなり、声のボリュームが半分になった。
それから怜は右手に持っていた袋をガサガサと し始めた。
その袋は、近所にある薬局のものだった。
ジャジャンッと効果音が出そうな勢いで、怜が何かを取り出した。
「冷えピタシート、怜に買ってきてもらったの」
智那が言うのと同時に、怜は冷えピタシートを中から取り出し、俺に渡した。
「熱あんのなら、無理すんな。風邪が俺らにうつると嫌だから、マスクぐらいしろ」
と、冷たく突き放す怜だけど、これは単なる照れ隠しだってことを俺と智那は気づいている。
俺と智那は必死に笑いを堪え、違う意味で震える手で怜から冷えピタシートを受け取った。