君に、この声を。
「ごめん、遅くなったぁ」
ちょうど冷えピタシートを額に貼りつけたとき、再びドアが開いた。
今度現われたのは佐々木さん。
さっきの怜と同じように、右手に袋を持っている。
透明のビニール袋だから、中身がすぐにわかった。
「りんご……?」
「うん。風邪ひいたときはりんご食べなよ」
「あれ? 奏太ってりんご嫌いなんじゃなかった?」
「えっ、うそっ!」
怜の言葉に、佐々木さんが大きく目を見開く。
「あー、違うクラスだからか。4月に奏太がクラスでそう言ってたんだけど」
「ごめん、知らなかった。よかったら、家の人に食べてもらって?」
そう言って、佐々木さんは俺にりんごを袋ごと渡した。