君に、この声を。
3. 記憶
東京のクリスマス。
窓の縁には、白い雪が積もっていた。
まだ少しボーッとする頭で、その白い雪をベッドの布団の中から見ていた。
外からは、隣のケーキ屋から流れてくる「きよしこの夜」と、家の前の道路を走るトラックの音が混じって聞こえてきた。
「よりによってクリスマスの日に風邪ひくなんてね。奏太」
母さんが呆れながら新しい冷えピタシートを持ってきてくれた。
俺はそれを受け取り、代わりに白い平べったい皿を渡した。
「え、もう全部食べちゃったの?」
俺は無言でうなずく。
「参ったなぁ、さっき向いたりんごが最後だったのになぁ……」
「だって、美味しかったから」
幼稚園児みたいな言い訳をする俺にクスッと笑う母さん。
優しい笑顔だった。