君に、この声を。
そのとき、体育館の扉から人影が出てきた。
「ちょっと、怜ー! はやくしなさいよー! 練習始まってるよー!」
あの、教室で俺の空想を繰り広げた城山智那だった。
その声を聞き、怜は時計をチラッと見て、「やっべ」とつぶやいた。
「なんかあんのか?」
俺がそう聞くと同時に、怜は小走りで扉へ向かって走りだした。
「今日は合唱団の練習が特別にあるんだ。奏太もこいよ」
そう言いながら走っていく怜を見つめながら、俺はゆっくり怜のあとを追っていった。
なんでついて行ったって?
そんなの、気まぐれに決まってる。