君に、この声を。
永岡はそのまま、智那の横をスタスタと歩いていった。
何かあったんだ。
一目見てそうわかった。
「奏太?」
「……わり。ちょっと先行っててくんね?」
俺の顔を不思議そうに眺めてから、怜はコクンと頷いた。
それから、怜は同じバスケ部(だった気がする)の男子と一緒に音楽室を出て行った。
もう音楽室に残っている生徒は少ない。
三年生の女子と何かを話ながら歩き出した崎田先生のあとを、智那は力なく歩いていく。
「智那」
ドアから出る寸前、俺は智那を呼び止めた。