君に、この声を。
振り向いた智那は、やっぱり悲しそうだった。
いつもの気が強そうな眉は、今日は下がっている。
「なんかあった?」
「別に――なんでもないよ」
嘘つくの下手なやつ。
顔に「なんかありました」って書いてあるようなもんだ。
それなのに、智那は偽りの笑顔を顔に張り付けている。
「バカか。なんでもないわけないだろ。その顔で」
「え」
智那はそう言って、自分の顔をおさえる。
「私ってわかりやすい?」「うん。めちゃくちゃ」俺の即答で、智那がうなだれる。