君に、この声を。



「でも、ほんとに何でもないから。気にしないで?」



笑う智那。


もちろん、それは本心からの笑顔じゃなくて。


少し引きつった笑顔は、明らかに無理をしていて。



そんな智那を見ると、これ以上何も聞けなかった。



「触れないで」智那の透明なバリアが確かにそう訴えていた。



「ん。無理すんなよ」

「無理してないもん」

「嘘つけ。わかりやすいくせに」



「わかりやすくないもん!」意地になって言う智那が、少し愛しく思えた。


< 78 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop