君に、この声を。
「お願いっ。智那しかいないの! 実絵ちゃんは自由曲のほうだけで勘弁してって言ってるし」
崎田先生が、私の目の前で両手を合わしている。
ちなみに、実絵ちゃんってのは学校のカウンセラーの先生、香椎実絵(かしいみえ)先生のこと。
毎年、合唱団の伴奏は香椎先生の頼まれている。
「わかりましたよー」
「ほんとに? 智那なら了承してくれるって信じてたわー」
私が返事をしたとたん、先生の表情が一変してニッコニッコになった。
この笑顔も断れない一つの理由なのかもしれない。