桜の木の下で【短編】
私がバス停に着いたのと同時にバスの扉が開いた。

気が付いたら、あの人は私の手を強くひっぱり、バスに乗った。

あまりに急で、強い力だったから、ちょっと驚いてしまった。


席に着いてから私は、あの人の顔を覗き込んだ。
だって、あまりにいつもと違うから、少し不安になってきたの。

そして、あの人は私を見て一言「このまま終点まで行く。」って言ったっきり
何も話さないし手も握ったままで、「いったい終点には何があるの?そしてこのバスの終点はどこ?」
私は心のなかで何度もつぶやいた。

不安になった私は、手を離そうと強く手を引いた。
でも、あの人はさらに強く私の手を握り、決して離さなかった。
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