それぞれの物語
バイトが終わって、店を出ると隆の姿があった。
「隆…」
座り込んでいる隆は、私に気付いた。
「奏、話聞いてもらってもいいか?」
私の部屋で聞くことにしたので、自宅に帰る。
「友里絵から話は聞いてるから。隆はどうなのよ」
11月で寒空の中、待っていた隆の体は冷たくなっているだろう。それだけ、友里絵との話を聞いて欲しかったのか。
やはり、閉まいきれてない想いがあってか痛い。思わず顔を歪ませた。
「奏?どっか痛いのか?」
言えるわけがない。
「なんでもない。それより、話するんでしょう。さっさと喋って」
可愛くないな、自分。
今この状況でも可愛いと思われたいのか…自分に呆れる。