才能のない作曲家



二人きりで過ごす最後の夜。

「別れて」と言った彼女は、僕の背中にしがみつき、
「行かないで」と泣いた。

そうだ、そういう君だから、好きになった。




そうするべきだ、そうしなければいけない、
そういう道をきちんと選べる君だから。

けれど、それだけじゃない。

それでも離れたくない、一緒に居たい、
そういう想いを口に出して僕に伝えてしまう残酷な君だから…、

そういう君だからこそ、僕は愛した。




何度も何度も、彼女を抱いた。
背中に爪を立てる君が愛おしくて、憎たらしくて。

彼女以上の女性を僕は知らない。

14歳年上の彼女は、僕にとって女神のような女性だった。

何度抱いても、汚しても、
朝になれば子供のように純粋な君に戻ってしまう。








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