才能のない作曲家
もう言葉で何かを伝えることは許されなかった。
強く強く、彼女を抱いた。
ひどく抱いた。
噛み付くようにキスをし、
息もつかせず奥へ奥へと舌を伸ばし、
彼女の唾液を吸い取り、
自分のそれを彼女に飲み込ませる。
額にかかる前髪をそっとよけると、
別れの悲しみと、熱とで潤んだ瞳が飛び込んできて…
また夢中で彼女の口内を探った。
もう何度も抱いてきた身体――。
どこをどうすれば彼女が鳴くのかなんて、わかりきってる。
快楽に引きずり込まれそうになると、ひどく恐がり僕にしがみついて来るのは、何年経っても変わらない。
「いいって、言って…?」
「い、や…っ」
「ここ、よくない?」
「も…っ、やぁ…、や、だ…ッ」
身体を赤らめて僕と一つになる彼女は、
この世のものとは思えないほどに美しくて、
僕は最後の夜でさえ、
また彼女への愛を深めてしまった。