【短編】隣にいる君が

「さっきのさー、ホームのカップル・・・」

「え?ああ・・・」

「あれ・・・元カレ・・・」

「・・・ふーん」

「あの子とさ、私、二股かけられててさ・・・」

「・・・うん」

「振られちゃったんだー」

「・・・そっか」


ケンちゃんは私が一人で喋っていても、
何も詮索せず、ただ静かに聞いていた。


「あんなとこ、見たくなかったなー」

「・・・だな」

「結局男ってさ~、おっぱいなわけ?ユキってさー確か、Gカップなんだって」


私が指を折りながら言うと


「そんなん関係ねーだろ」


とケンちゃんがぼそっと言った。
そんな風に真面目に返されると困ってしまう。
いつもの調子で「オメーは胸全然ねーもんな」とかつっこんでよ。


私のお弁当はお腹がすいているはずなのに、
全然進まず、2缶目のビールが空になった。
もう炭酸はいいや、と買ってきたワインを開けようとしたら、
そのワインを取り上げられた。


「これ飲んだら、止まらなくなるからダメ」

「いいじゃーん」

「もう酔っ払いの介抱はしたくないっての」

「酔っ払わないもん」

「すきっ腹にぐびぐび飲みやがって・・・
 ビール2缶でもうキてるだろ・・・ほら、家に帰っぞ」


とベッドに投げてあったダウンジャケットを取り、
手を引っ張られて立たされた。


「もっとここにいたい~」

「はいはい、また今度ね」

「家に帰りたくないー」

「帰りたくないって・・・」
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