【短編】隣にいる君が
友達に借りたという車の助手席に座った。
ケンちゃんは普段吸わないくせに無言で
煙草を吸いながらハンドルを握っている。


あまり何も考えずに流れる外の景色を見ていたけど、
そろそろ着いてもいい頃なのに知らない景色だ。

「ねぇ・・・うちこっちじゃないよ・・・?」


それに答えず、黙って運転するケンちゃんに、
まぁいいやと投げやりな気持ちになり、ずっと外の景色を眺めていた。


「ついたよ」


着いた場所は市街地を離れた所にある公園で、夜景が一望できる。
ここ数日で一段と冷えた空気が
地上の明かりを更に美しく見せる。

ずっと黙っているケンちゃんに、私から口を開く。


「さっきはごめんね・・・」

「・・・」

「私・・・いつもケンちゃんに甘えてばっかだね・・・」

「・・・そんなことないけど」

「ケンちゃん、私みたいな子・・・イヤだよねー・・・」

「・・・だって」

「え?」

「だから・・・逆だって」

「え?」

「好きだから・・・ミズキが・・・」


突然の事と意外な事でびっくりして、気付いたら泣いていた。


「え?ごめん、あれ?俺、なんか変なコト言っちゃった?」


しゃくり上げて、ぶんぶんと頭を振ることしかできない。


「困ったな・・・」


ハンカチをバッグから取り出し、涙を拭くけど、
後から後から出てくる涙に自分でも驚く。
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