【短編】隣にいる君が
その後うっかり飲んだ泡盛が一気に効いて、トイレに駆け込んだ。
便座にしがみ付いて、汚いとか構ってられず、
地べたにお尻をつけてゲーゲー吐いていたら
誰かが背中を擦ってくれているのがわかる。

少し乱暴だけど、ラクになる。

優しいなぁ・・・あったかいなぁ・・・。

大きく一呼吸して、手渡してくれるおしぼりを受け取りながら顔を見るとケンちゃんだった。
ちょっと怒ってるっぽい。


「ほら言わんこっちゃない」


おしぼりで口を拭きながら、へへへ~なんて笑っていると、
また気持ち悪くなり、便器に顔を突っ込んだ。

ダメだなぁ・・・お調子モンは。

お水の入ったグラスをもらい、一口飲んで渡す。


「お・・・おしっこ・・・」

「え・・・ええ?あ~、じゃぁ俺外、出るから・・・一人で大丈夫か?」

「ん・・・」

「あと会計済ませたから・・・みんな外で待ってるからな?」

「はーい」


個室から出て、洗面所で顔を洗う。
少し吐いたらちょっとスッキリした。
ガサガサのペーパータオルで顔を拭き、濡れた手で髪の毛を整えた。

ケンちゃんかー、意外と優しいヤツだったんだなー。

私たちが座っていたテーブルは食べ物の残骸とたくさんのコップが散乱していて
それを店員が片付けている。

すまんのぉ。
あーもう酒こぼれてベタベタになっちゃってる。

自分が客だとわかっていながらも、ついつい片付けたくなるのは職業病か。
< 3 / 15 >

この作品をシェア

pagetop