【短編】隣にいる君が
冷房のガンガンに効いた店内から出ると、むっとした熱気が立ち込める。
夕方、夕立が降ったのに、アスファルトはもう半分乾いていた。

店の前ではみんなが笑いながら同じアイスを食べていた。
1箱に8本とか入っているやつだ。

やっぱり同じアイスを舐めていたケンちゃんに、

「なんでみんなアイス食べてんの?」

と聞く。


「ああ、店長がそこのコンビニで買ってきた」

「私のは?」

「遠野は遅かったからもうねぇよ」

「ええー」

「じゃぁこれやるから・・・」

「ええー」

「なんだよ」

「食べかけイヤー」

「じゃぁ食うな」

「やっぱ食べる」


その半分溶けかかっていて、少し齧られているアイスを奪い取り、口にする。
薄っぺらいミルク味の懐かしいやつだ。
冷たくてシャリシャリしてて美味しい。

先にみんなが歩いている少し後ろをケンちゃんと二人で並んで歩いた。
熱帯夜だったけど、なんだか気持ちのいい夜だった。
生ぬるい風もなんだか心地いい。


「ダイジョブか?」

「うん」

「酔っ払いめが」

「へへへー」


多分、この時からだ。
私がケンちゃんを気になりだしたのは。
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