【短編】隣にいる君が
全ての仕事が終わった時、0時を回ろうとしていた。
はー、今から終電間に合うかな・・・
ぶつぶつ言いながら着替えを終え、
タイムカードのところに行くとケンちゃんが待っていた。


「おつかれ」

「おつかれさま」


自分のカードを探し、機械に通す。


「指は?血とまった?」

「うん、大丈夫」

「あ・・・のさ」

「うん」

「これからどっかメシ食いに行かない?」


ドキっとした。
嬉しくて即答したいのに、何故か心と裏腹なことを口にしてしまう。


「でも終電があるし・・・」

「そっか・・・」

じゃぁ、駅まで送ってくわ・・・なんて一緒に店を出る。
ちっと心の中で舌打ちしながら、終電に間に合わなければいいやと思う。

二人で並んで歩くと、ケンちゃんはかなり背が高い。
私も166cmあるから、女にしては高い方なんだけど、
それでも見上げるようにして喋る。

ケンちゃんは店のある駅の隣に住んでいるので、
使い込んだMTBを押しながら歩いている。
学校にもこれに乗って通っているんだそうだ。
でも今のケンちゃんはいつものケンちゃんではなく・・・
私の方も調子が狂ってしまう。
いつもみたいにスケベな話でも振ってくれたら、
こっちもつっこんだりできるのに。

何を話したらいいんだろう・・・。
困ったなぁ。
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