フライングムーン
第十七章
扉を開けると知らない教室に彼がいた。
机に座ってクラスメイトと楽しそうに話しをしている。
でも少し変だった。
私と彼が出会って一緒に過ごしたのは、小学生の頃だったのに、今、ここにいる彼は高校生くらいに見えた。
制服を着て、あの頃よりも背が伸びていた。
何よりおかしかったのは、伸びた髪が金色に染まっている事だった。
ふと自分を見ると私も制服を着て、高校生のような姿をしている。
私は教室に一歩、踏み込んで彼に近付いた。
こんなに近くにいるのに彼は私に気付かない。
あの頃の私ではないからだろうか。
私は思い切って彼の髪に触れてみた。
彼は急に触れられたせいか目の前に来た人物が私だと分かったせいか一瞬、驚いた表情をしたけれどすぐに変わらない笑顔で私を見返した。
そして両手で私の頭を撫でて“君は頑張ったんだね”と変わらない声で言った。
私はギュッと目を閉じて彼の言葉を胸の中で繰り返した。
< 18 / 21 >

この作品をシェア

pagetop