フライングムーン
第十八章
ピピピピ…。
次に目を開けた私が見たものは見慣れた天井だった。
頭がボーッとして、すぐに目覚まし時計のアラームを止めるという動作に体がついていかない。
アラームを鳴らしたまま、私はもう一度、目を閉じた。
そしてもう一度、開いた。
見えたのはさっきと同じ見慣れた天井だった。
耳を澄ましてみた。
聞こえるのは起きる時間を告げるアラーム音だけだった。
私はゆっくり体を起こしてアラームを止めた。
まだ、彼の事を覚えていたのかと少しおかしくなった。
気付けばあれから10年が経っている。
それでもあの庭の穴はポッカリと開いたままふさがる事はなかった。
私はさっき見たばかりの彼の夢を思い出しながら出掛ける支度をした。
化粧をして、衣装と楽譜を持って、外に出た。
見上げた空にフライングした月はいなかった。
もう彼もフライングした月もここにはいない。
私は、あの時、彼を追えなかった事を後悔していた。
最後だというのに玄関先で“元気でね”とだけ言って握手をした私を彼はどう思っただろうか。
今ではもうあの時の彼の顔をちゃんと思い出す事が出来ない。
次に目を開けた私が見たものは見慣れた天井だった。
頭がボーッとして、すぐに目覚まし時計のアラームを止めるという動作に体がついていかない。
アラームを鳴らしたまま、私はもう一度、目を閉じた。
そしてもう一度、開いた。
見えたのはさっきと同じ見慣れた天井だった。
耳を澄ましてみた。
聞こえるのは起きる時間を告げるアラーム音だけだった。
私はゆっくり体を起こしてアラームを止めた。
まだ、彼の事を覚えていたのかと少しおかしくなった。
気付けばあれから10年が経っている。
それでもあの庭の穴はポッカリと開いたままふさがる事はなかった。
私はさっき見たばかりの彼の夢を思い出しながら出掛ける支度をした。
化粧をして、衣装と楽譜を持って、外に出た。
見上げた空にフライングした月はいなかった。
もう彼もフライングした月もここにはいない。
私は、あの時、彼を追えなかった事を後悔していた。
最後だというのに玄関先で“元気でね”とだけ言って握手をした私を彼はどう思っただろうか。
今ではもうあの時の彼の顔をちゃんと思い出す事が出来ない。