【掌編集】魔法使と少年少女。
 陳謝のつもりなのかクロウはルルゥの体をきゅっと抱きしめて、小さい子をあやすように背中をやさしくとんとんと撫でさすった。激しくバカにされているようでむっとするルルゥは一瞬だけ目の前の大男に殺意を抱く。

「――っ」

 じゅうっ、と何かが焼ける音が聞こえた。

 ぱっとクロウが反射的にルルゥから体を離す。ルルゥの背中に触れていた右手を押さえているようだった。
 なにがどうなったのか理解できずにルルゥはクロウに歩み寄る。

「……クロウ?」

 クロウの左手が隠すように押さえた右手の甲にルルゥは一瞬ひどい火傷を見た。はっとして息をのんだルルゥにクロウは営業スマイルをぎこちなく見せた。

「ク…」

「大丈夫、落ち着いて」

 苦痛に顔を歪めたのはほんの数分のことで、クロウは治療が終わった自分の手をルルゥに見せ、ほらね、と破顔した。

「……俺、よくわかんないけど、それって――いまさっき出来た傷だよね」

「うん、そうみたい」

「―――」

 信じられないとふるふると首を振るルルゥにクロウは静かに表情を引き締めた。

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