MFNゲノム
「学生カードの向きが違います…」
図書館のゲートで、また足止めをくらった。
この度に、俺は学習能力がないのかと軽く自虐的な気持ちになるが、
すぐに、矢印も書いていないこの分かりにくいカードのせいにする。
向きを変え、情けない犯罪者のような写真が写ったカードが、ゲートに吸い込まれた。
入館を認められた犯罪者は、黙って2階へ歩を進める。
さすがにこの時間は人が少ない。
開館と同時に図書館へ行く勤勉な大学生など、俺たちくらいなものだ。
俺はそんなことを考えながら、文学書コーナー脇の机に向かった。
「おはよ。」
チエはさっきの電話からは考えられないほど小さな声で言った。
「さすがに人少ないね。私たちは大学生のカガミだ!」
俺はチエと同じことを考えてしまった自分をちょっぴり反省しながら席に着いた。
「俺が来るのは試験前のノートのコピーか、こういう時だけだけどな。」