MFNゲノム
「なんかシュウヘイさんて、ここから見るとシスチルの桜木さんソックリですよね!」
助手席のチエは、信号で止まった時にそう言った。
「そうすか?ただ泣きボクロが同じとこにあるだけで…」
照れを隠した表情を作りながら、俺はそう言った。
チエは1年前うちの学部に転部してきた。
うちの教授の文学基礎演習を受けて、心理学よりも興味を持ったらしい。
チエの転部と、新入生の歓迎を兼ねて、学生控え室で飲み会が開かれた。
肝心の酒を買う役を仰せつかった俺は、先輩の車を借りた。
「私も行きます。こちらの学部での初仕事です。」
チエと俺と、同じ学部のアキヒロ、マリコを乗せた車内で、あの今は聞き飽きたセリフ第1号が発せられたわけだ。
「そうそう、コイツが桜木とか褒めすぎだって!アレ見たらそんなこと言えるかな?」
「アハハハ!出しちゃう?アレ。」
アキヒロとマリコは後ろでそう言いながら笑い出した。
「アレって何ですか?」
余計な興味を持ったチエは、俺たちに聞いてきた。