経験なくっちゃダメですか!?
こういう時は、無視するに限る。

知らん顔して、出口に向かう。


・・・なんだったんだろ、今の男の子。


わけわかんなかったけど、でも、イケメンの部類だな。

なんて、思いながら自動ドアの前に立った瞬間、大声で呼び止められる。



「お客様、お客様!!
官能小説コーナーから『淫らな遊び』をお持ちになったそちらのお客様、お会計がまだでございます!!」


ヤツが芝居がかった真剣な顔で私を追ってくる。


お店中の視線、私に集中してるし・・・


あっ、私、さっきの本、持ったままになってる。


大声は続く。

「すみません、私の見間違えでなければ、お客様、『淫らな遊び』のお会計が・・・」


「わかった、わかったから。
ちょっと、お願い、静かにして」





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