好きになっても、いいですか?
「――――あ、さこ」
「おっ……お父さん!無理しちゃだめ」
未だ虚ろな目に、麻子を捕えた克己はその最愛の娘の名を呼び手を震わせていた。
「び……っくりしたんだから!」
「ああ……悪かった」
こんなときにも麻子は涙を流さずに堪え、わざと怒ったように振舞う。
克己はそれを宥めるようにして、嬉しそうに麻子の体温を感じていた。
純一は、その父子を病室の入り口に背をもたれかけさせながら、ひっそりと暗い廊下で様子を窺っていた。
「お父さん、やっぱり手術受けよう」
「その話は……」
「大丈夫だよ!お金も、手術のリスクも」