好きになっても、いいですか?

一先ず落ち着き、看護師に廊下に出された麻子は、ドアのすぐ横に立っている純一を見て、彼がいたことを思い出した。

そして、つい最近の“謝礼”の話を思い出す。


(この人に借りを作りたくない。自分の力でどうにか助けたい。
でも現実には、すぐに大金用意するのは無理……)


「何をそんなに意地になる?」


一連の会話を聞いていた純一は、一言麻子に投げかけた。
しかし、それに対しての麻子の答えは聞けぬまま……。

すると、純一がおもむろに麻子の手を取り、静かな病棟の廊下を闊歩し始めた。


「ちょっ……ど、どこへ……」


向かった先は、先程会った自動販売機のある休憩スペース――ではなく、そのすぐ横にあるナースステーションだった。


「担当医師はどこだ。今すぐ手術の手配を頼みたい」




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