好きになっても、いいですか?
いきなりやってきた赤の他人が何を言うんだ、と、その場にいた1人の看護師と麻子は目を丸くして純一を見た。
そして、やっとこのおかしな状況に口をはさんだのは麻子だ。
「勝手なことっ……」
「前払いだ。君の給与から。それで問題ないだろう?」
純一が自分を見る目は、からかったり気まぐれでそんな提案をしているようには思えない。
しかし、麻子はあまりにもありえない行動に困惑する。
とりあえず、看護師に軽く頭を下げてから、また休憩スペースへと純一を押しこんだ。
「ちょっと、そんな簡単に……!」
「父親の命よりも大事なものってなんだ?俺なんかからの援助は受けられないっていうプライドか?」
「……」
麻子は、その純一の言葉に何も返す言葉が出てこなかった。
いつもなら、もっとうまくやりあって、言いたいことも言えるのに。
だけど、今の純一の言葉は、核心を突かれてしまった気がして。
ただただ、麻子は下唇をぎゅ、っと噛んだ。