好きになっても、いいですか?
*
「お疲れ様でした。本日の外出予定はもうありません」
「ああ。でも約束の時間ギリギリで久々に冷や汗をかいた。次からはもう少し余裕を持って――――」
「そうですね。申し訳ありません……社長??」
出先からの帰りの黒い車の中で、次の仕事の書類をメガネの男が差し出したのを受け取らず、男は何やら探し物をしているようだ。
「何か、お探しですか?」
「敦志、鞄を見せてくれ」
「は、はい」
「…………ない」
顔面蒼白になっているのを見て、敦志《あつし》と呼ばれたメガネの男はただ事じゃないことに気づく。
「何がないんです――?」
「セナフーズの記念イベントの案内状だ」
「え?でも確か封書を内ポケットに――……」
メガネの奥の目を大きくして社長に向き合う敦志はなるべく落ち着いた声でそう言った。
しかし男はその封書を既に手にしていて中が見えるようにして敦志に答えた。
「中身だけが、ない」
「お疲れ様でした。本日の外出予定はもうありません」
「ああ。でも約束の時間ギリギリで久々に冷や汗をかいた。次からはもう少し余裕を持って――――」
「そうですね。申し訳ありません……社長??」
出先からの帰りの黒い車の中で、次の仕事の書類をメガネの男が差し出したのを受け取らず、男は何やら探し物をしているようだ。
「何か、お探しですか?」
「敦志、鞄を見せてくれ」
「は、はい」
「…………ない」
顔面蒼白になっているのを見て、敦志《あつし》と呼ばれたメガネの男はただ事じゃないことに気づく。
「何がないんです――?」
「セナフーズの記念イベントの案内状だ」
「え?でも確か封書を内ポケットに――……」
メガネの奥の目を大きくして社長に向き合う敦志はなるべく落ち着いた声でそう言った。
しかし男はその封書を既に手にしていて中が見えるようにして敦志に答えた。
「中身だけが、ない」