好きになっても、いいですか?

「社長も、何か召しあがった方が――」
「……」


敦志がそう言いかけた時に、目の前には相変わらず麻子の用意した昼食があった。
別に、嫌であれば麻子の差し入れを断ればいい話だが、純一はそれをしなかった。


「最近、顔色がいいですね」
「は?」
「芹沢さんのおかげですね」
「なんでそうなるんだ」


純一が机との距離を取り、椅子を後ろにスライドさせて軽く伸びをする。
くるりと敦志の方向で椅子を止めて見上げた。


「気付いて無いんですか?」
「何を」
「社長の栄養を気遣っての食事内容だということを」


敦志は大体の食事内容を見ていて気が付いたことがある。
単に自分のお弁当のついで、という内容ではないことに。
ちょっとした栄養士の指導を受けたかのような、バランスの良さが麻子の食事にはあり、敦志はそれに気づいていた。



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