好きになっても、いいですか?
「いいのよー。初めは落し物のカギかと思ったわ」
「落し物……そうですよね」
(泰恵さんのロッカー前とはいえ、床においたんだから)
そんな話をして、あっという間に昼休みは終わりになった。
「またいつでもきてね」
「はい。泰恵さん、本当にありがとうございます」
勝手に“お母さん”を重ねて見てしまって悪い気もするが、麻子はやっぱり優しい泰恵が好きなのだ。
―――同時刻。
とある一室でひとつの噂が動き出す。
「――――婚約者?」