好きになっても、いいですか?
(まさかこれ、社長の……)
麻子は、手のひらに乗る大きさの長方形のカードを見て思い出した。
最近、カードキーのマンションが増えていて色々なタイプがあるとテレビでやっていた。
ホテルなどでもよく見掛けるかざすものや、リーダーを通すもの。
今、手に収まっているものはかなり薄めでちょっと力を入れれば割れてしまいそうだ。
それに小さな丸い穴が、ランダムに開いている。
「もしそうだとしたら、これがなかったら家に入れないんじゃ……」
麻子はそう考えると、すぐに連絡をとろうと思い立つ。
しかし、純一の連絡先は、あろうことか秘書であるのに把握していない。
早乙女にしても同様だった。
(私のバカ!社長はともかく、早乙女さんの連絡先くらい、今回のことがなくても聞いておくべきなのに)
麻子は時計に目をやり、ひとつだけ閃いた。