好きになっても、いいですか?


「まずい……」


エントランスホールは、また別のキー。
そこをなんなく通り抜け、あと1枚扉を開ければ我が城だ。

しかし何度ポケットを探っても、必要なものが出てくることはなかった。


「はあ……」


溜め息を吐き、携帯電話を取り出す。


(管理人に連絡をしようか――その前に、敦志にでも確認してみるか)


一番多用する敦志の番号は履歴の上にあって、すぐにコールを鳴らすことが出来る。
そして、大体2コール……遅くとも3コール目までには電話をとる程、敦志は優れた“秘書”だ。


『はい。どうかしました?』
「ああ、ちょっと。キーを忘れた……か、無くしたか」
『キー?自宅の?』
「敦志が拾ったりしてないかと、一応確認の連絡だった。いや、いい。管理人に連絡とって……」


純一が話を終わらせようとした時に、敦志が言葉を被せる。


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