好きになっても、いいですか?
『芹沢さんに確認してみましょう。管理人にはその後に』
敦志は早口でそう告げると、電話を切った。
純一は待受画面に戻った携帯を見て、開けられない玄関に背をもたれ掛けさせ、小さく息を吐いて腕時計を見た。
「20時過ぎ……もう帰宅してるだろ」
独り言を言いながら、敦志から『芹沢さん』という言葉を受けたことで麻子を思い出す。
麻子はあれから実によく働く。
小さなミスはたまにあるが、“新人”にしては、かなりずば抜けていると純一が感心させられる程だ。
恐らく、あの“貸し”が効いて余計に彼女をそうさせているのだろう、と純一もわかってはいた。
麻子という存在は本当に不思議で、いつでも対等な……言い換えれば生意気な態度で向かってくるのだが、それが純一にとって、今までの女性に対しての概念が覆される程に心地がいい。
その時は勿論苛立ちを感じたりはするが、男のように後腐れがないのだ。
加えて、尊敬に値する程の麻子の人柄・能力は、純一の中で女性という存在の考え方を大きく変えた。
そんなことを一人考えている間に、早くも敦志から折り返し連絡が来た。
「もしもし。……え?何だって?」