好きになっても、いいですか?

02



「この通りに乗っちゃえばすぐだから」


運転手の佐々木が、麻子にそう言ってアクセルをふかす。

麻子は返事をして、窓の外に視線を移した。
――その時だった。


ピリリリリ。


「えっ?」


普段滅多に鳴らない携帯が、振動と共に音をあげている。
麻子が慌てて携帯を取り出し確認すると、登録されていないナンバーが表示されている。
呼び出し音がなる中、電話をとろうか躊躇っていた。


「麻子ちゃん、電話出ないのかい?」


佐々木にそう言われて、麻子は否定することも出来ずにそのまま通話ボタンを押し、耳にそっとあてた。


「も、もしもし……?」
『芹沢さんですか?』
「え?はぁ……」


電話越しに聞こえてきた男の声は、すぐに誰だかわからずに、知り得る人物の記憶を探り出す。
そして―――。


「さ、早乙女……さん?」



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