好きになっても、いいですか？

『はい。早乙女です。芹沢さんは今、どちらに？』
「えっ……えぇと、車で……」
『車？』
「はい。実は……社長のもの、と思われる忘れ物をお届けに……」
『忘れ物？もしかして、それはキーじゃないですか？』
「そ、そうですけど」


麻子は驚きの連続だ。
自分の携帯番号を知っていたことも、これから届けようとしている忘れ物がキーだと知っていたことも。


『そうですか！良かった。では、今は佐々木さんの車なんですね？』
「は、はい。送って下さると。あ、あの……早乙女さんは私の番号を……」
『ああ、そう言えばお教えしてなかったですね。契約書を初めに拝見してましたので……私だけが芹沢さんの連絡先を知っていて、申し訳ありませんでした』
「いえ、そうだったんですか」
『では、お手数ですが届け物をよろしくお願いします』


そう言われて通話を終えた。