好きになっても、いいですか?
キッ、と車が止められ、そこに建っているマンションはすごく高級そうな立派なマンションだった。
多少想像はしていたが、それをも超えるものだ。
何階まであるのか――。
麻子が首が痛くなるほど真上を見上げていると、車の中から声を掛けられて再び首を元に戻す。
「待っていましょうか?」
「いえ、申し訳ないので。どうぞ先にお帰り下さい」
「そうですか?では……」
そういって、運転手の佐々木はテールランプを暗闇に残しながら去って行った。
そして麻子は再びマンションの入り口と向き合って、玄関へと足を進めた。
「え?オートロック……」
ひとつ潜り抜けた扉の次にあったのは、オートロック用の機械。
手にしているカードを差すような所も、かざすような所も見当たらない。
恐らく、ここはまた別のキーか暗証番号が必要なのだろう、と麻子は溜め息をつく。