好きになっても、いいですか?
そのとき、機械の前でしどろもどろしていた麻子の横から、ドアの開閉音が聞こえた。
反射的にそちらを見ると、見なれたスーツの男がドアの向こう側に立ってこちらを見ている。


「しゃ、社長!」
「……」


オフィス以外で会うのは病院以来。なんだかいつものような“社長”の雰囲気が薄れている気がして、麻子は少し戸惑った。

何も口を開かない純一に、麻子がやっと話しかけた。


「あ……の、これを」
「ああ……悪い」


いつも言い合いはするけれど、元々純一は口数の少ない方。
けれど、今はそのいつもにも増して、なんだか言葉が少なく感じられて麻子は気まずい感じになってしまう。


「そこに、椅子と自動販売機がある」


見てみるとエントランスはホテルのように広く綺麗で、そこを指して純一が麻子に移動するように促した。


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