好きになっても、いいですか?
その声に反応して、虚ろだった目をぱっちりと開き、がばっと起き上がる。
「え?こ、ここ……私!」
目の前にいるのは父でも、もちろん母でもなく――。
「しゃ、社長……!」
麻子は慌ててベッドから降りようとする。
しかし、純一はそれを止めて言う。
「君は、人の食事を気にしているが、自分はちゃんと食べているのか?物凄く軽かったぞ」
「!!??」
それは純一が、自分を抱きかかえたということ。
麻子は目を覚ましたばかりということもあってか、珍しく焦り、顔を赤くする。
「す、すみません!もう大丈夫ですから!!」
言葉と同時に勢いよく立ちあがったとき、麻子はまたクラッと足もとがふらついてしまう。