好きになっても、いいですか?
「無理をするなって!」
支えられた手はあの、失礼で横柄な男の手。
だけど、なぜか今は優しい手。
(夢の中で拭ってくれたのはきっと、この手……)
麻子は未だに紅い頬をしたまま、潤んだ瞳で支えてくれている手の主を見上げた。
「まだ、震えてる――」
純一がそういうと、麻子の手を取った。
純一が言うように麻子の手は小刻みに震えていた。
それは純一が原因ではなく、先程倒れる前後からのこと。
「あ……の、もう……離して――――」
いつもの威勢の良さがない麻子。
純一はそんな麻子を、なぜか離せずにいた。
そして麻子もまた、いつもなら突き飛ばす勢いがなく、ただ黙って純一に身体を預けるだけだった。